香川『教育』を読む会3月例会報告(名称変更しました)
今回、ご参加いただいた方は、私と、香川県内の公立高校、私立高校教員の方、特別支援学校教員の方、中学校教員で香川県国民教育研究所などでご活躍されている方、高松市で社会教育にかかわるお仕事をされながら現在では県内のボランティア活動の支援やESDの活動支援などに取り組まれている方など、前回参加者に加えさらに二名の方合わせて、六名で、前回以上に非常にバラエティーに富んだ方々に集まっていただきました。
3月号の誌面の内容をざっと紹介し、今回はその内容の共有より、論文や記事で取り上げられているテーマに即して、参加者の方が課題と感じた論点を話していただいたり、意見交換をしたりということが中心になりました。私としては、読書会としての活動の中で、こうした論点や各自が想起されたことについての意見交換を重視したいと思っており、むしろ未読の参加者が改めて会の終了後にバックナンバーや個別の記事を読んでみようというような気にさせる会になることも大事ではないかと思っているのですが、そういった意味では、誌面の内容をふまえつつも、参加者の発話や論点で肉付けをしていく交流の会になったかと思います。
会の中では、前回同様、私の方で簡単に2016年3月号の誌面の内容の概説を紹介し、参加者の論点と意見交換など交流の時間では、色々な交流がさらに行われました。以下はその交流で出された論点です。
・実際に被災後に福島県を訪れた際、現地の方との交流の過程で、「復興」を急ぐ観点から地域の様々な課題が残っているにもかかわらず半ば強引に学校を再開させるように感じられる地域が存在していたり、被災から何年もたっているのに除染残土の問題で日々苦悩されている方の存在、もともと地域であった「海の人」と「山の人」の考えの違いのようなものが被災後更にそれが大きくなったというようなことを知った。
・岩手県の陸前高田市の高校の方から、学校施設などが遺体安置所になっていたりして、遺族の方などを学校の職員の方も案内するなどのことをされていたことを知った。地域の遺体と向きあったり遺族の方の悲痛な表情を前に学校職員の方々もいろいろな意味で被災後に心労になった時期があったことを知った。
・311以降、東北における日本の地域の課題や、経済発展の裏で抱えてきた原発の問題が存在していることが露呈され、それをどのように見ていくのか、また学校教育でどうその問題に向き合うのか、そういった転機に成ったように思う。また一方で震災後の課題、解決しきれない地域の課題や人々の分断のような状況もあり、そういったことが学校現場に反映している点もあるのではないか。
・被災後に福島を訪れたとき現地の保育士の方と交流する機会があり、保育を建物外で行えない苦悩や、食べものにたいしての配慮など、原発問題以後の保育実践での課題を知ることができた。
・地域のことをテーマにする場合や、被災地で様々に得た知見を共有しようとするときに、今回の誌面のように、地域の課題と学校教育であるとか、被災前の地域課題と震災後であるとか、ある程度の広がりの中で課題を模索するような姿勢も必要ではないかと思う。共有する人が「自分」で考えて自身の課題につなげるような教育実践の必要を感じる。とくに被災地からの教訓を学ぶという際に、「防災」という観点は重要ではあるが、技術論的な視点で誤解されるようなことでは伝わりきれていない点があるように感じる。
・特集2の「地域に行き、地域をつくる」の誌面から、自分がこれまで取り組んできた実践を励まされているように感じた。今後も、地域のキーパーソンや地域おこし協力隊の人々ともつながって、生徒の学習活動の広がりが反映させられているようなことを実感できる取組にしていきたい。
・最近よく聞く、地方創生の文脈や、居住している高松市内の地域の取り組みや課題など、色々と情報を得たいと感じた。
・地域を見る際に、観光などの先進地ではそのイメージによって町の課題が対象化しづらい場合もあるが、むしろ多様な街の状況を反映した取組や学習実践の可能性を追求したい。
・改めて被災と地域をテーマとした今回の誌面で、自分の課題として取り組んでいくというESD的な課題認識が共通課題とされていることを感じた。また一方で生活綴り方実践のような日本でこれまで取り組まれてきた活動が現在どのように受け継がれていきつつあるのか、その点にも関心がわいた。
・生活綴り方の現在という時に、山形の佐藤藤三郎氏の取り組みや、長野県の恵那の実践など、いくつかの取り組みを自分でも振返ってみたい。
などなど、興味深い議論や実践交流ができました。
被災地の取り組みを教育実践に組み込んだ参加者の方がいて、また次回以降でもその取り組みの紹介などを今後していくということで、そういった点でも誌面の論点が深まる会となりました。
当面は、丸亀市周辺と高松市周辺、交互に一ヶ月毎行うこととしました。したがって次回は会場は未定ですが、香川県中西部(坂出・宇多津・丸亀のどこか)で開催する予定です。
次回予定は以下の通りです。会場は未定なので決まり次第また更新過去のブログに追記いたします。
4月例会
日程:2016年4月20日(水)19時~21時
会場: 未定(香川県中西部)
5月例会
日程:2016年5月18日(水)19時~21時
会場: 未定(高松市内)
問合せ 中俣保志(香川短期大学) メール:kjcjugyo0000@gmail.com
雑誌教育についてはこちら↓
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/jyanru/zashi_kyoiku.html
最後に当日議論の中で話題となった著作のamazonリンクなどを参考文献としてはっておきます。
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地方消滅の罠: 「増田レポート」と人口減少社会の正体 (ちくま新書)
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